暖かい心

(その六)




思いもよらない病名だった。“緑内障”。
幸いにも発見が早く、即日治療を開始して頂き、眼圧も下がってきている。

不安感一杯の私に、「治療を始めたのだから何も心配はいらない」と先生は
懇切丁寧に説明をしてくださった。パソコンを止める必要はないという話
に私は欣喜雀躍!!帰りは口元はほころび、鼻歌まで出るありさま。

早速、主治医の内科の先生に報告に行った。
先生は、私がパソコンを生き甲斐にしていることを知って、目が疲れないよう
に色々アドバイスをしてくださった。
有り難かった。

今は、医薬分業になっているので、いつもの処方箋を持って薬局へ入った。
この薬局の薬剤師の青年とは、よくパソコンの話などをしているので、
「石原さ〜ん」と呼ぶのがこの青年だと嬉しくていそいそするのである。
“あれっ、今日は目がね掛けてるっ”
「あ、今朝寝坊したものですから・・コンタクトレンズ・・時間がなくて」
青年は頭を掻いた。
“ねえ、バソコン用にカラーレンズの老眼鏡作ろうかしら〜。”
パソコンに目を保護する為の何か画面に掛ける物があるらしい話をしていた
が、「要するに、パソコンの時間をあまり長くやらないのが一番ですよ。
そして、時々空を見るんですよ」と青年は微笑んだ。

「石原さん、実はわたし今月一杯で此処を辞めるんですよ」
突然、青年は言った。
来月から私のささやかな楽しみが一つ消えた。



前から気になっていた駅前のこの機関車は、ミニチュアではなく、本物らしい
昭和五年頃の蒸気機関車のようだ。
それにしても小さい!!。
松山の子規庵の前に有る機関車もこんなに小さかったように思うけど、あれも
本物だったのかしら・・・。



駅のホームに電車が入ってきた。
あれっ!空耳かな?

♪赤い靴 履いてた〜女の子〜
異人さんに連れられて〜いっちゃった〜〜♪♪

勿論、電車からではない。何処からか聞こえてきたのだ。
横浜でもないのに・・・・・涙が溢れた。


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