桜に想う

(その五)




両国の「江戸東京博物館」に行ったのはもう何年前になるだろう。その時
売店で買ったのがこの手拭いである。「上野寛永寺境内花見の景」と書い
てある。
私が九州から上京したのが二十五歳くらいだったと思うが、その頃、花見
といえば上野公園だった。すくなくとも私の周辺は。
それも夜桜・・・。
夜桜といえば・・何が付きますか? そう、お酒!。
適量を忘れた若者が、花より団子とばかりに飲みまくったら?・・・・・
お定まりの喧嘩が始る。恐ろしい光景だった。 
私はあれ以来花見が嫌いになった。

去年、長男と京都の嵯峨野を訪ねた。
行きたかった竹林は勿論だが、満開の桜のもと、こんな光景に出会った

こんな可愛い若い娘さん二人じゃ、人力車を引くお兄さんも力が入ろうと
いうもの。

夜、八坂神社から丸山公園の夜桜見物に出かけた。
そこで見た桜の妖しいまでの美しさを、私は忘れる事が出来ない。
ライトアップされて、白く輝くその木肌、拡げた枝の巾はどのくらい
あるのだろう。
私は妙な事を連想していた。
歌舞伎の名女形と言われた、(名前は度忘れしたが、)役者である。
白塗りの名女形の女も及ばない毅然とした美しさ、妖しいまでの美しさ
それは、闇の中のざわめきも一瞬かき消すほどの妖しさだった。

≪ねがはくば花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃≫(西行)

ついでだからと足を伸ばして清水寺まで歩いた。
清水の舞台から・・・のあの舞台からライトアップされた下を覗いた?
い〜え、覗きません!。私は高所恐怖症!!。欄干に掴まってガタガタ。
でした〜〜。


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