銀座へ行く


(その十八)


掲示板の若いお仲間からお声が掛かったので、いそいそと出掛けた。

弥生三月だというのに、小雪がぱらつくかもとか、雨が降るかも
とか心配しながら出掛けたけれど、幸い穏やかなお天気に恵まれた。

春先、秋口の東京行きは着るものに悩まされる。
栃木を出る時間は、まだとても寒く、うっかりぼてぼて着込んで
行くと大恥を掻く。
電車の中の女性は皆美しく、ひらひらした素適なワンピースなどを
着て颯爽としているからだ。

その点、今回はよかった。東京もコートを着るほど寒かった。

いつもの田園風景が、段々人家が増えてきて、小さな看板を沢山
見ていたら、不思議なマンションを見つけた。
お城の天守閣を重ねたような形をしているのだ。
屋根も白壁の上に和風の屋根が乗っかっている。慌ててデジカメを
出そうとしたが当然間に合わなかった。

待ち合わせは、大抵、浅草の改札を出た所なのだが、方向音痴の私も
いくらか馴れて来て、銀座四丁目の服部時計店前にした。
現在は「和光」というそうで、私は今回まで全然知らなかった。
因みに私の眼鏡は「和光のメガネ」なんだけど・・・。


服部時計店はもっと重厚な感じだったと思うけど、すっかり新しく
なっていた。

三愛は、昔から丸っこいビルだったと思う。
二十代の頃、三愛のワゴンにあった安物のブラウスと、一応英国製
のネクタイを買って、とても幸せだった事を思い出す。


若い方達と昼食を挟んで、楽しい時間はあっという間だった。

もう日が長くなっていて、帰りの電車で隅田川を写す事が出来た。


隅田川といえば、異臭を放つほど汚れた時期があったように思う。
たしか、美濃部知事の時、川を綺麗にされた記憶があるが・・。

今は遊覧船で川を楽しむことも出来る。
しかし一方、川淵には青いテントが出来、そこで暮らす人達がいる
という現実もある。





人々が溢れる華やかな銀座、美しいパステルカラーの春着が店頭を
飾り、魅力的なアクセサリーが並ぶ。
競って建てられるビルの群れ。どこが不況なのだろうか。

とことん、何もない、今日食べるものに困った時代を生きてきた
人間としては、なんという贅沢な時代になったものかと、思うば
かりだ。(16.3.12記)


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