太い梁 |
テレビを見ていたら、昔の蔵を改造した部屋が映っていた。 昔ながらの古い農家などでも見られるものだけど、天井に 立派な太い梁があった。 私は、“あれが落ちてきたら大変よねぇ”と家人に話しなが ら、ふっと、こんなことを思い出していた。 戦時中、慰問袋を作って前線の兵隊さんに送ったものだが、 何か手作りのものを入れたいと、一生懸命考えた。 十三・四歳の少女が考えたもの。それは・・・ 侍人形だった。 軍国少女は、兵隊さんを励ますつもりで、頑張って作った 積もりだったけど、受け取られた方はどう思われただろう。 それは、厳つい「藤田東湖」の人形だったんだもの。 |
水戸の弘道館の正面玄関を入って広い廊下を左に曲がった 直ぐの壁に東湖さんの肖像画やら書などが展示されている。 もう二十年も前になるだろうか。水戸偕楽園の梅を観に 行って、ついでに徳川一色の感のある水戸を見て廻った。 西山荘にも行った。ふくよかな光圀さんにも会って、かの 大日本史が積まれていた書棚を見て感動したものだった。 軍国少女の私は、東湖さんのこの大きな詩に感動した。 天地 正大の気、 粋然として 神州に鍾まる。 秀でては 不二の岳と為り、 巍巍として 千秋に聳ゆ。(一部分) 多感な少女の心を最も捉えて離さなかったものは、 ≪ 安政の大地震に老母を救おう とし梁木に圧せられて死んだ。 ≫ である。(15・7・4記) |