台風に想う |
雨が音を立てて降っている。台風はどうやらなくなって雨だけに なったようだ。 五月の台風は珍しいと予報官が言っていた。 台風というと必ず思い出すことがある。 台北の家は、純和風建築、つまり昔の日本の家で、((^.^))雨戸 だらけだった。 台風がまともにぶつかるので、家は防風林に囲まれていた。 まあ、昔はどこのお宅もそうだったと思うが、台風がくる度に窓に 斜めに板を取り付けて窓が破れないように男達は必死になって いた。ガラス戸だって、今のようにサッシじゃないからすぐ割れた ものだ。 ある夜のことだった。物凄い雨風に、例によって家中の雨戸が閉 められたうえ、停電でもしたのか真っ暗だった。 特に風当りの強い場所に集って父と兄はあちこちと抑えていたよ うだ。母はロウソクを持っていたと思う。 突然、雨戸が外から叩かれた。「とん、とん」・・・「こーん」・・ こん、こん、と叩いている。“ダレカいる〜”と私は怯えた。 一番奥の部屋は昔、祖父が寝ていた(白い布を掛けられて)、私 にとって最も怖い場所だった。 「早苗!おじいちゃんだ!!おじいちゃんが<さなえ子〜〜>って、 逢いにきてるよ」〜〜〜〜。 父と兄はそういって私をからかった。 六つ年上の兄は、柔道をやっていてとても頼もしかった・・? ロウソクの灯りの揺れる気味の悪い部屋を私は兄の服を掴んで くっついて歩いたっけ・・・。 えっ、結局あの音はなんだったのかって? あれはね、防風林にしていたビンロウの実だったのですよ。(笑) 物凄い風に飛ばされて雨戸に当っていたんですねぇ。 「コツン、コツン」って。 ビンロウの実は集めて乾燥させ、お風呂の燃料になりました。 |