暮らしの中で今を詠む
(二)
後ろ髪引かるる思い病室を 出でてそそくさタクシーを呼ぶ
(夫の元気のない日)(H.22.4.30)
我が手より細き指先夫の手の 白々として爪ばかり伸ぶ
(今日は爪を切ってやった)(H.22.5.7)
今週も頑張ろうねと鉄線花 吾に微笑む満開の朝
(50以上は咲いていたそのエネルギーを貰う)(H.22.5.17)
「また明日」握手をすれば放さない 夫の力の強くなりいて
(♪傍に居てくれるだけでいい♪かな?私は小さく歌っておどけた)(H.22.7.9)
シャワー浴び秋思一先ず流しけり
(いろんなことが重なるときは重なって)(H.22.9.2)
束の間の爽気楽しむ門扉まで
(今朝新聞を取りに玄関を出たらなんだか涼しくて)(H.22.9.3)
ちちろ鳴く眠れぬ部屋の闇の中
(外かな〜部屋の中かな〜なんだか嬉しかった)(H.22.9.3)
生きん哉鶏頭のごと逞しく
(庭のあちこちに鶏頭の勢いが強いの。力を貰えるわ)(H.22.9.4)
病棟は消毒ばかり厳しくて何故かたじろぐ重き扉に
(抗生物質の効かない菌が出てきたので、どの病院も厳戒態勢だ)(H.22.9.8)
病室の窓より見ゆる柿の実の 色づきたるを夫と語りぬ
(スーパーに富有柿が出たら、夫の好きな熟柿にして持って行ってやろう)(H.22.9.15)
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