来し方を想ふ


(9) デパートの裏方


(8)ヴェニスの商人 の熊本時代から数年経過して再び
私は熊本で少しの間暮らした。

(この間の経過した数年というのは、父親の仕事の関係で
宮崎、大分で暮らしたのだったが。)

熊本の話のついでに再びの熊本時代を思い出してみよう。

親達は大分県のある市にいたが、私だけ熊本の母の妹の家
に世話になって市内のデパートに就職した。


デパートといっても売り子ではなく、宣伝課という言わば
裏方さんだ。
華やかな店内からは想像も出来ない大変な仕事場だった。
今頃のデパートはそんなことはないだろうが、あの時代だ
もの。
店内放送のアナウンス、ショーウィンドーの飾りつけ、
電通の職員の出入り、催し物の案内をラジオで流す為の
原稿書き・・・などなど。
なんだかとても雑然とした雰囲気だったように思う。

記憶に残っているのはラジオで流す文を書かされたことだ。
雛人形の売り出しのコマーシャルだったと思う。
ちょっと嬉しかったなぁ。

出入りする電通の人がちょいといい男で長谷川一夫みたい
な雰囲気だった。(言うことが古いネ)(笑)
その人に、ある時奥さんから電話が入った。
彼は「えっ、カレーライス?そう〜嬉しいなぁ〜」と
少しトーンの上がった声で返事をしている。
カレーライス位でこんなに喜ぶ男がいるのかと、少々驚い
た。子供じゃあるまいし・・・・・。
(はは〜ん、華やかなデパートに出入りしているので、
奥さんに時々締められてるな?ゴマ擂ってるんだ〜。)

(ふふふ・・(笑)下司の勘ぐりだね。(笑))

ショーウィンドーの飾りつけを変える時は大変だけど
楽しかった〜。ちょっと置き方を変えるだけでぐんと見栄
えがするんだもの。
専門の人が居て、ああでもない、こうでもないと
ためつすがめつ眺めてやっと決定する。


今でも私はデパートのショーウィンドーを見ると、
「う〜ん巧いなぁ」と、飾りつけをした人たちのご苦労
を思ってしまう。(H.18.9.12記)


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