俳句


(二十三)


小作りの老女が二人枇杷の花

長崎のとある町に引揚げて、役場の前を通りかかった時
だった。「○○っあんとこの○○しゃんが帰ってきた
げな」。小さなおばあさんが二人囁きあって通った。
「○○しゃん」は父の名だった。


ひっそりと赤滴らす実万両

玄関を出たところに、大きなモチノキがある。
何気なく通った私の視野に真っ赤な玉が入った。あれっ?
モチノキの子どもだと思っていたのに実が生ってるわ・・
しげしげと葉っぱを見比べてみた。似てるけど違った!
万両らしい! 嬉しくて、早速デジカメに収めてみたけど。


笑顔にて結果告ぐ医師冬ぬくし

結果といったって、そんなにたいした話ではない。血液検査
の結果と、胃の透視の結果だけど・・・・・。


雪吊や我が小藩の石構え

雪吊りといえば真っ先に浮かぶのは、加賀百万石の兼六園
だろう。百万石の堂々たる構えだ。それに比べて
わが城址公園では・・・・堀でアヒルがお昼ね中・・・



解約に背を刺す視線時雨くる

なんでも、契約する時は下にも置かないサービスをされて
気恥ずかしいくらいなのだが・・・・・


埋火や灰の厚みの深まりて

自分では、まだまだ埋火(見かけは消えかけたように見えて
も、芯はしっかり燃えていて、胸中まだ燃え上がる余力の
あることをいう場合もあると、歳時記には書かれている)
の積もりでいるが、どうも最近は灰が重くなってきたようだ。


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