俳句


(十五)


表札の跡の凹みや茎立ちぬ

空家がありました。大谷石の門柱に埋め込まれていた表札が
外され、跡の凹みが妙にもの悲しさを誘っていました。


人住まぬ庭に枝垂れ桜かな

曲がり角の豪邸。何時の頃からか誰も住んでいない。庭の
真ん中の大きな枝垂れ桜が満開だった。この家の方達は何時
どこへ行かれたのだろう。


菫見て留守のこの家の主待つ

あれっ、お留守かな?




会ふたびに大人びる子や桃の花

骨格が変わるのでしょうか、子供は顔立ちも会うたびに変わり
大人びて参ります。伸び盛りの子供のなんと瑞々しいことか。


熱の子の聞き分けのよき春の午後

普段はちょっと生意気な口をきいたりするのに、まあ、急に
大人しくなって。お利口だねぇ。早くよくなるといいわねえ。


西口に人溢れ出で春夕焼

どっと人が吐き出されてきます 都会の駅、ロマンティックな宵
になるかも・・・・・。


焼き鳥の匂ふ駅前春茜

あ〜いい匂いだ!!たまんないなあ。
♪ちょいと一杯の積もりで呑んで〜 何時のまにやら梯子酒〜♪
“おとうさ〜ん 終電乗り遅れますよ〜〜”


朧月つと離れたる影ふたつ

♪も〜し も〜し ベンチで囁く お二人さ〜ん は〜やくお帰り
夜が更ける♪♪


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