句、折にふれて


(十二)


片方の手袋ありて空くベンチ

冷たい風の吹く駅のホーム。待合室に飛び込んだものの座席は一杯。
一つだけ空いていました。でもそこは、忘れられた素敵な片方の
手袋の席でした。

寒紅を濃いめにつけて決めしこと

私の誕生日は三月三十一日。あと二ヶ月足らずでまたひとつ歳をとり
ます。この歳になりますと、一日一日がとても貴重なんですね。



池凍ててすってんころりん鳥転ぶ

テレビを見てましたら、つるつるの池で鳥がすってんころりんと転んだ
のです。驚きました、鳥でも転ぶんですね。あんなに指が開いてるのに
。私も調子に乗ってすって〜んといかないように、心して日々を送りま
しょう。

風花や郷社に人の気配なく

わが町の氏神様は、歴史のある由緒正しい神社なんですよ。「ある日あ
る時」にも書きましたが。 何か行事のある時はとても賑やかに、人が
溢れますが普段はしーんとしています。鬱蒼とした杉の大木が並ぶ長い
参道が大好きです。

消防のホース跨ぎて注連焼きに

この神社でどんど焼きがありました。厳かに宮司さんの祝詞が上がり、
積み上げられた古いお札やら達磨さんなどに点火されます。燃え上がる
火の手は十メートルくらいでしょうか。消防士が十名くらい詰めていま
した。

長靴が蹴飛ばしてゆく春の雪

春の雪は軽いんです。午後下校時の子供たちが賑やかに通ります。一人
で帰る子もいます。黄色い長靴で思い切り雪を蹴飛ばしながら・・・

浅春や宇宙に墓標の立ちし朝

スペースシャトル コロンビアの悲劇が報じられました。厳しい訓練に
耐え抜いて選ばれた方達でした。


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