晩春の塩原

(十四)

何時までこうして出掛けられるか知らないけど、
今年も何時もの宿に行ってきた。


例によって、部屋についている露天風呂で一風呂
浴びて、夫が生ビールを飲み始めたので、私は
デジカメをぶら下げて散歩に出た。流石に県北、
桜は満開だった


遙か下まで降りれば渓流沿いに散策路が出来てい
るがもうそんな勇気はない。
楓だろうか、瑞々しい緑と赤っぽい新芽が美しい


遥か下の渓流沿いの道から、中年の女性が上がっ
てきた。小石も混じった凄い坂道だのに、平気な
顔で上がってきた。地元の人だろうがえらいなあ


しかしまあ、なんという暑さだろう。もう少し
薄着で来ればよかった。そろそろ部屋に戻ろうか


いかにも素人っぽい部屋係りの女性が、
「山のやしお躑躅が綺麗ですよぉ」と教えてくれ
たので、渓流を挟んで迫っている山にデジカメを
向けた。遥か向こうにピンクの花が群生していた


その女性には102歳のお祖母ちゃんがいて、
矍鑠として、漬物を漬けたり、畑仕事をしたり
料理もするそうだ。なんと素晴らしいこと。


翌朝、宿に仄かにかほる香と同じ花の香を買って
きた。今もその香の中で書いている。百合の香だ
(17.5.1記)


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