塩原温泉

(十)

「いくらなんでも、もう桜は終わりでしようね。八重も・・」などと
運転手さんと話しながら東北自動車道をゆき、塩原に着いたのは
2時過ぎだった。
そろそろとしか歩けない主人と、露天風呂付き客室に入り、一風呂
浴びて、美味しそうに生ビールを飲む主人を部屋に置いて私は散歩に
出た。



もう少し若くて、健脚だったら道路から急坂を降りて渓流に沿う
散歩道もあり、逆に山手には遊歩道もあるのだけど、私には無理
な話。仕方がないので、ぶらぶら歩きながら下の方を見ていたら、
あれれ・・不思議な光景が目に入った。
大岩を大木の根が抱えているではないか。



紅葉の時期ならもっと山も見栄えがするだろうに、まだ殆ど枯れ木
で、虎刈り頭みたいに常緑樹が緑を見せているだけでは、デジカメ
もなんだか出番もなく、そこそこに宿に帰った。
部屋の露天風呂の下は、鬼怒川の時と同じで水量豊かな渓流だ。



この宿は、宿の外、眼下に見える渓流の向こうにも露天風呂を持
っている。
何気なくカメラを向けた先に、な、なんと、裸の男性が四・五人
居るではないか。吃驚仰天して、部屋に逃げ込んだが・・・・・。



客室から見える所に露天風呂があるのもちょっとおかしいと思う。
人が入っていないのを確認して、部屋の小庭からゆっくりあたり
を見回してみた。この岩の湯には吊橋を渡って行くらしい。
ゆったりとした良い眺めだ。



この部屋の露天風呂は源泉から引いてあり60度もあるそうで
水をいれて自分の好みの熱さで入れるようになっている。
ぬる湯好きの私には最高の贅沢だった。
久しぶりの温泉にゆっくりと四肢を伸ばして、ライトアップ
された庭を眺めながら至福のひと時だった。



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