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其の一 〜ニューヨクへ逝きたいか?〜 |
| うーん……。 あかりは一体何をしたいんだ? あそこまで強情のは初めてだ。 結局根負けしちまったが……。 何をしたいのか全く見当がつかないぞ……?? こんこん 「おぅ」 かちゃ 「浩之さん、お風呂のご用意が出来ましたぁ」 「おっ。いつもすまねぇな、マルチ」 風呂焚きはいつもマルチがやってくれている。 水を張って13分、タイマーをセットするだけといいながら、水量が溜まる時間を忘れることが多々ある人間と比べ、マルチはこういうことに関して忘れなくなったので(さすがに学習型だ)非常に大助かりだ。 しかも、マルチにはマイベスト水温である39.6度を極めて正確に手で測れてしまう本人ですら気付いていなかったとんでもない特技まである。オレはいつでもすばらしい風呂を堪能できるというわけだ。 おっと、こうしちゃいられない。早く風呂に入らないと、39.6度が思う存分堪能できないじゃないか。 オレは手早く下着を用意すると……って、 「げっ!?」 思わず声をあげちまった。 いつもは洗濯して乾いたらぐちゃぐちゃに放り込むだけのオレの下着が、きちんと畳まれているじゃないか。 ま、まさか……、あかりか!? そ、それじゃ……。 ごそごそ や、やはり……無い!! がってむ!! 「おぉ……神よ……」 日頃信仰心のないのに天に祈っても全然効果無いだろうが、そうせずにはいられない、『う゛ぇりぃねがてぃぶまいんど』なオレだった。 ちゃぽん。 「ふぃ〜〜っ……」 なんだかんだ言っても、マルチが入れる風呂は格別だ。そんじょそこらの温泉にも負けない……ってオレ温泉につかったことなんて未だかつてないんだった。良くて温泉の素くらいだな。 しかし、今日は本当にいろいろあったなぁ……。 がらがらっ 「浩之ちゃん、背中流そうか?」 「……」 「あれ? どうしたの? 私の顔に何かついてる?」 「きゃああああーーーっ!!」 思わずオカマのような裏返った声を出してしまうオレ。 そんな声に驚いた表情を見せるあかりだが、すぐに落ち着きを取り戻した。 「はー……っ、もう、びっくりするじゃない、そんな大声出しちゃ」 「を、を、をまえ、何しにきたんだぁ!?」 「浩之ちゃん……を、じゃなくて、お、だよ」 「んな文字にしないとわかんねーことはどーだっていい!!」 「だから、浩之ちゃんの背中を流そうかな? って」 「気持ちだけ受け取っておく! だからとりあえず出てってくれっ!!」 「浩之ちゃん……ひょっとして照れてるの? やだぁ、小さいときよく入ってたじゃない。それにここにはCCD……」 そこまで言うと、ぽっ、と顔を赤らめるあかり。 「なんでもない」 あかりさんっ!! 『ここにCCD』ってなんですかぁ!? と、オレが顔半分ベタで塗りつぶしたような引きつった表情を見せると、あかりは何か気まずい顔をした。 「あの、そのね、浩之ちゃん……その、いたじゃない! ほら、高い声で唄ってた……ロマン○ィックが止まらない、とかが代表曲の……その人に似てるなって……」 10年以上前のネタを振られても、まだ当時十に満たないオレにはC−C−▲なぞ通じるはずもなく、 「さすが浩之ちゃん、わかってくれてるよね」 うるさい。 まず天井! そしてドア! ……異常ないな……。 あっ! まさか……!? ざばぁっ!! どどどどど……!! 「ここかっ!! 更衣室!!」 ……ない、ない、ないっ!!! 「今日ここ、掃除しちゃったから」 そういうと、不気味にせせら笑うあかり。こやつ……。 「それに……、やっぱり本物の方がいいな」 どういうことだ……? ……。 うひゃうっ!! どどどどど……!! ざばぁっ!! 「……」 「……」 や、やっぱり……。 「……見た?」 「そりゃもう」 赤くなって顔を伏せながらもピースサインをみせるあかり。オレも真っ赤になって顔をぼこぼこと沈めてしまう。 「やっぱり、あのサイズを使ってるだけあるなぁ、って」 そんなあかりのセリフに『すーぱーうるとらぐれーとでりしゃすわんだふるねがてぃぶまいんど』になってしまったオレだった……。 「わぁ、懐かしいな、燃え▲お兄○ん? 『やるじゃない!』」 ……なんで知っている……。 |