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最終序章 〜どうせいっちゅうねん〜 |
| ぴんぽーん。 「あ、はいー!」 チャイムの音を聞きつけて、マルチがスリッパの音をぽてぽて(ぱたぱたではない)させながら玄関に向かう。 おそらくあかりだろう。 「あっ、あかりさん、いらっしゃいませー」 マルチの少し小さくなった声が響いてくる。やはりな。オレの勘ははずれない。 ……単にあかりしか来るヤツが思いつかなかっただけかもしれないが。 「こんばんは。お久しぶり、マルチちゃん……よっ、と」 よっ、と? 「あかりさん、なんだか大荷物ですねぇ……、どうしたんですか?」 大荷物? 「うん、ちょっと訳ありで……」 訳あり? 「今、マルチちゃんの充電機材はどこに置いてあるの?」 「えっ? 浩之さんの隣のお部屋ですが……」 「それじゃ、向かいのご両親のお部屋が空いてるわね……」 空いている? って…… 「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!」 「何? 浩之ちゃん……んしょ……重い……」 「あかりぃ!! なんなんだその大荷物はぁ!?」 「え? あ、これ? 私の衣服とか、洗面用具とか……くまちゃんも忘れてないよ」 「なんでそんなもん持ってくるんだぁ!?」 「え? だってくまちゃんがいないと眠れないから……、あ、今日からは浩之ちゃんが代わってくれるのかな?」 「な……って、ちっがーう!! その前の、衣服とか、洗面用具とか……ってのはなんだぁ!?」 「浩之ちゃんのお家に、下宿しようかな、って思って……」 「な、な、な……」 「なが三つ」 「……」「……」 マルチの一言は、時間をも止めることが出来た。 ドラ○もんのタイムウオッチも真っ青だ。 ちなみに作者はタイムバルーンやタイムふろしきが欲しい(意味無し)。 そして、時は動き出す……。 「マルチ……なんだ? その『なが三つ』ってのは」 「あれ? 浩之さんから、同じ言葉を三回続けたらこういうもんだ、というお話を以前お聞きしましたが……『ふっふっふ、歩が三つ』とか……」 「あ、そういえばそうだったな。ちゃんと覚えてて偉いぞ」 なでなで。 「あ、ありがとうございますっ」 「浩之ちゃん、普段何を教えてるの?」 「はは……、こんなことしか教えてなかったりするんだよな……っじゃなーーーいっ!!」 「惜しいなぁ、忘れたかと思ったのに」 「だいたい、お前とオレの家なんて目と鼻の先じゃないか!? 何で下宿する必要があるんだ!?」 「もちろん、ただでとは言わないよ。炊事はすべて私担当、どう?」 「おっ、それはいいな……、ってちっがーーうっ!!」 「えぇ? 良い条件だと思うんだけどなぁ……」 「……それはそうだが、根本的なことが抜けてるぞ」 「えっと……、あ、浩之ちゃんのご両親の許可をもらわないとってこと?」 「それじゃない」 「あ、そうか。もしかして、大学に転居届を出すことかな? 大丈夫、私がやっておくから」 「全然違う」 「えっと、えっと、あ、そうか、ご両親の部屋のタンスの奥にHなビデオを隠してるから、それを移動させるとか? やだぁ、そんなことはとっくに知ってるよ」 「な、なんでそれを……だからそんなんじゃなくて」 「うーーん、じゃあ、浩之ちゃんの部屋の本棚の真面目なタイトルカバーの裏に仕組んである、より過激なものを厳選した2〜3本? それとも、ベッドの足下のアニメものかな? あっ、そうだ! 机の奥に隠してあるロリコンものかな? 確かにあれは危ないよね……どうみても『しょ」 「うわあああっ!! 言うなぁ!! X指定になっちまう!! じゃなくて……い、いつの間に……」 「だって私、藤田浩之研究家だから」 ……マジで怖いですよ、あかりさん……。 「いいか、あかり、よく聞けよ? オレは男で、お前は女。しかも19だ。な? それじゃ、いくら幼なじみ同士だからって同じ屋根の下で下宿ってのはさすがにやばいだろ?」 「あ、そうか……」 「わかってくれたか?」 「それなら同棲でもいいよ」 「わかってないっ!!」 ……結局、あかりは居座ることに決定した。 今回はなぜ、あそこまで強情だったんだ?? |