焼物のギャラリー


 
 
 
 
 
 
陰干し


************ 借窯徒然 ************

オブジェ?

ж48ж これなんですか?

 焼き物にはいろいろな種類があります。碗とか皿とかカップとか。
 そしてその種類の中でも更に飯椀、汁椀なとどと別れています。
 でも「んじゃ、それの何が違うの?」と聞かれると困ってしまいます。だって明確な区分が無いんですもの。
 ですので、その区分は作り手が命名してそれと決まります。なので、同じような形であっても作り手が違うと片方は飯椀として、一方は汁椀として、同じようなものが同じ売り場になってしまいます。
 売り手がこんな状態ですから、使う方はもう何が何やらですよね。
 「ご飯茶わんが欲しいんだけど、飯椀しかないのかしら。こっちの汁椀ってなってる方が好みの形だけど、これでご飯食べちゃいけないのかしら。」てな感じになっちゃう。
 で、終いには「お茶碗が欲しいのだけど」と言われ突き詰めて聞いて行くとお皿だった、なんて事も。  統一規格を、とも思うのですが、やはり焼物は工業製品ではないですから感性の赴くままに名付けて、使う方もご自由にでいいんじゃないでしょうか。
 ちなみに私の中では、飯椀は高台が小さめで高く口が広がっていて持ちあげやすくご飯を取りやすい形、汁椀は高台が広く低めで胴が丸みを持っていて安定したたっぷりと入る形としています。
 が、昨今は高台の小さい物が好まれる様で小さい高台の汁椀風が売れるみたいです。ちょいとしたはずみでも倒れてみそ汁ぶちまけやすいから気をつけてね。
 この様に、作り手がそうなんだと言えばそうなのですが、やはり「なぜ?」とか「なんで?」と思わされるものも多いですね。皿として売られているけど、どう見ても鉢だよね。とか。
 まあ、「そう言うんだからそうなんだろう」と妥協は出来ます。先にも書いたようにそれとして使わなければいけないという事ではないですから。
 でも、〇〇皿、のようにその頭に付いている〇〇については妥協ではなく疑問ばかりの物もがあります。
 この〇〇は形状を現すものと模様を表すものがあって、その両方を並べている物もあります。有名どころの物にはその他にも土やら産地やら技法やら気持ちやら等をくっつけてやたら長い銘になっている物もありますが、それはおいといて、普通にその辺のお店で売ってる物の場合。
 まず、模様を表す場合。
 たとえば「椿文皿」とあればそこに椿が描かれていて当然と思える場合と、「あっ、これ椿なんだ」という場合。前者は良しとして後者は椿が抽象化されていて、ホゥとウ〜ムがあります。
 ホゥは特徴をよくとらえていて感心させられるような抽象化。ウ〜ムはどうしてこれが椿なんだ?ですね。
 また、何かの模様がなされていて「大気」なんて書かれていたら、「この作者はこれを作った気どのような心理状態だったんだろう。大丈夫か?」なんてなってそれはそれで楽しいです。
 しかし、形状を表している物は真に「なんで?」となる物があります。
 たとえば皿であれば、丸皿、角皿、平皿、深皿、縁取皿、等々何の疑問をも挟む余地が無いのが普通なのですが、その様な中にあっていまだに「なぜ?」なのが、益子の伝統的な形状の皿「砂皿」です。
 砂皿は縁が丸く膨らんでいる底面が広いちっょと深めの皿。玉縁鉢といって縁がちょっとプックリした鉢がありますが、それをもっと大げさにした皿です。カレー皿などに適していますね。
 その様な形状なので丈夫です。ちょっとぶつけたら縁が欠けた、なんて事はありません。が、それゆえ重い。ただでさえ重いのが特徴の益子焼なのにそれに輪をかけて重い。尺砂皿(直径約33p)なんてなると3枚一度に運ぶのもちと大変。てな訳で今は不人気。あまり見かけなくなりました。
 で、この砂皿の「砂」これが解りません。なんで砂?。  聞いてみても皆?。いつ頃から、どのようないきさつで、名前の由来、解りません。ただ、私が思うには、益子粘土で出来ているので砂皿なのではないかと思っています。
 焼物は大別すると陶器と磁器に分けられます。陶器は粘土から作られて、磁器は陶石を砕いて粉にした磁土から作られます。なので、陶器は土物、磁器は石物とも呼ばれます。
 で、益子焼は陶器、土ものです。ですが、この土が曲者で砂が多いんです。道具を洗った桶にはそこにたっぷり溜まりますし、ロクロ作品の高台を削り出すと削った表面がガサガサになるくらいに砂が入ってます。 ですから益子焼は土物ではなくて砂物。なので砂皿。
 かなー?
 この理屈でいくと益子粘土で作った皿は砂皿に限らず砂皿になっちゃいますよね。砂碗とか砂湯呑みとか。
 もしかすると石皿というものがあってその用途で使われていたけど石より柔らかいということで、かもしれませんね。

何色?

 もうひとつ解らない物に「ヤツデ小鉢」というのがあります。浅い丸鉢なのですが、縁が直線的に内側に倒れています。
 やつでの葉っぱの形をしている訳でもないのに、これがなんで「ヤツデ」?
 もしかすると「こういう形の鉢にヤツデの模様を描いてくれ」なんて注文があったんですかねぇ。その形がそれまでの益子には無かったのでヤツデ鉢と呼ばれるようになって、ヤツデを描かなくなってもヤツデ鉢の名前だけが残った。かな?

 解らないと言えば形、名称以外にも?なのが色です。
 益子焼の伝統釉は並白・黒・糠白・灰・益子青磁・飴・柿の七つです。(あれっ?六つだった気がする。何が余計かな?)
 ではこれって何色なんでしょう。実は私自身も、ああいう色、というのはなんとなく解っていますが、じゃそれは何色なんですかと聞かれれば正確に答える事は出来ません。だって定まっていないんだもん。
 例えば並白。これは透明釉ですので色はありません。とはいかないのです。焼き物においては釉薬単体で成り立つ事はありません。必ず本体があってその表面に用いられます。なので本体が違えば色も違うのです。つまり土の色次第。それも釉薬の濃さや焼く時の火のあたり方で色が違って来ます。とても一言では表せません。
 もうひとつ表現が辛いのが灰です。これも透明釉で、並白と似た性質を持ちますが、何の灰を用いたかで全く発色が異なって来ますし、並白よりデリケートでちょっと釉薬の濃さが違うだけでより顕著に色の違いが現れます。
 黒・糠白・益子青磁・飴・柿は比較的現しやすくて、黒・白・緑・透明感のある茶色・茶色、で片付けてもさほど問題にはなりそうもありません。その名前からしても想像できますからね。
 ただし、実際はそれぞれもっと微妙な色合いですし、糠白なんてどんな白だろうと逆に疑問になってしまうかもしれませんね。糠白は単純に白ですが、ベースの土に含まれる金属によって茶色っぽくなったり青っぽくなったりします。益子青磁も名前のように青磁色ではなくてべったりとした緑色です。これも青緑だったり白みがかった緑だったり。糠白釉も原料に灰を使っていますので、名前からして米糠の灰かと思いきや、籾灰です。なのになぜ「糠」なんですかねぇ。本当に米糠でもいいらしいのでやってみようとしたのですが、灰を得るため試しちょっと燃やしたところ、ひどい刺激臭がして苦情が来ましたのでやめました。
 ちなみに並白を濃く施釉すると飛青磁花生のような色になる事があります。
 と、いうように具体的な色を表現できればいいんですが、なかなか。YNBですとか&H0000C000&ですなんて表現出来ない世界ですし、淡黄蘗から裏柳ですとそれっぽく言ってもやはりその色では無いところが困ったものです。

 焼物は基本的にこの様に曖昧模糊な世界です。それゆえに作り手はそれがなんであるかを明確にするために「〇〇釉□□紋△△××6寸※皿」なんて銘を付けたりします。これにより現物を見なくともおおよその色形はわかります。しかし、それにより使い方を縛ってしまったりもする弊害も生まれますし、銘のみで注文したところ思っていたのとはだいぶ違ったなんて事も起こります。
 でも今の世の中はインターネットによって色形を見る事が出来るようになりました。使い方も自由になって来ています。なのでもうこの様な銘を付ける必要は無くなって来たと思えます。ただ残念ながら画像では大きさ、重さ、肌触り等を伝える事が出来ません。そして色も撮影時の明るさ、機器の画像処理方法などによって違ってしまう場合もあります。そして限定1品という物を除けば、表示されているのはあくまでもサンプルであって、表示物が送られてくる事は無いのです。
 もちろん、同じ物を作るように一生懸命やってはいるのですが、どうしても微妙な違いは出てしまうんですよね。いや、意識的にマイナーチェンジもしちゃいます。作っているうちに「あっ、ここはこうした方がいい」という事はしょっちゅう。ですから、「揃いものを1つ増やしたいな」となっても同じ物を入手するのは困難と思っていただいた方が良いでしょう。
 なんだか言い訳がましい方向に行ってしまったので元に戻しますと、焼物は「これなんだろう」というところも楽しみのひとつなんですよね。今の御時世では焼き物産地に足を運んでは難しいかもしれませんが、別にわざわざ遠出をしなくてもいいのです。近くの焼物販売店やそれこそ100均やスーパーでもいいんです。飯椀と書かれている品を「これなんだろう」と考えてみると違う使い方も見えてきます。実際に手にとれば重さや肌触りやしっくり感も確かめられてあれやこれや。
 でもいずれはVRとかで家に居ながら焼き物産地を訪れて手にとって品さだめができるなんて時代が来るのでしょうね。そうなってもこの楽しみが出来るようなレベルのプログラミングである事を期待します。  



 


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