聖ニコラスとサンタクロース

サンタクロースはいないと思っている生徒に
親の思いがサンタクロースと関わっていることを知る授業

 12月になると街はクリスマスの準備でにぎわいます。小さな子どもの頃は、サンタクロースの存在を信じ、クリスマスプレゼントを楽しみにしていました。しかし、いつの頃からかサンタクロースの存在を信じなくなり、単にプレゼントがもらえる「物質的な日」になってしまいます。そんな考えを一掃させる授業です。

●ねらい
 サンタクロースについて考えることにより,家族愛の心情を深める。
           (4-6家族愛)

●準備物
・ニューヨーク・サン新聞社説 中村妙子訳『サンタクロースっているんでしょうか?』(偕成社)


●授業の実際(2年で実施)
1.この人は誰でしょう。
■この人が良いことをした人というイメージを持たせるための発問である。
 トルコ生まれ。西暦3〜4世紀の人。司教でこんな逸話があります。
 破産してしまい、貧しくなった家がありました。その家の父親は娘を結婚させようと思てもお金がありません。どうしようかと困っていました。それを知ったこの人は、その家に金貨を投げ入れて助けてあげました。


2.これも同じ人です。誰でしょう。
■この人が厳格で神聖な人というイメージをもたれていたことを知らせる発問である。
 18・9世紀のヨーロッパの版画版に描かれています。司教様らしく、厳格な顔をしていて白い長いひげを生やしています。一言でいうと厳格で神聖な人です。
 上記の1.2を行ったが、生徒は誰のことだか全然分からない。ところが、「白いひげ」ということだけで「サンタクロース」と叫んだ生徒がいたが、周りは怪訝な様子だった。ここでは敢えて正解だと教えずに先に進んだ。


3.1822年アメリカのムーアが書いた詩には次のように描かれています。誰でしょう。
■最近のイメージに近づくための発問である。
 陽気で愉快な小人です。丸い顔で突き出たお腹で白いひげを生やしています。
 正解した生徒の発言を聞いていた生徒たちは「あぁ、なるほど。そう(サンタクロース)かも。」という反応をしている。聞いていなかった生徒たちはまだ全然分かっていない。


4.1863年以降のアメリカのナストが描いたイラストでは、こうです。誰でしょう。
■小人から大人にサイズが変わったことを知らせる発問である。
 大人サイズで太っているが、幸せそうではない。


5.1910〜1930年のアメリカのライエンデッカー、ロックウェルが描いたイラストではこうなっています。誰でしょう。
■発問3〜5はテンポよく行い、徐々にイメージが高まるようにしたい。
 大人サイズで太っていて、背がもっと高くなりハンサムです。
 「ひげはあるのですか。」という質問が生徒からあったので「発問4・5のイラストにもひげはあります。」と答えた。


6.1931年以降のアメリカのハッドン・サンドブロムが描いたイラストでは、こうなっています。誰でしょう。
■現在のサンタクロース像は、このイラストが元になっている。そのことに気づかせる発問である。
 童顔で真っ赤な服を着ている
 ここで多くの生徒が分かった。やはり、トレードマークの赤い服と白いひげが決め手になったようだ。

 発問1・2の答えは「聖ニコラス」です。この聖ニコラスを祝う祭りが元になって、クリスマスが生まれたそうです。
 聖ニコラスをオランダ語では「シンタ・クラース」と言うそうです。これが「サンタクロース」の名前の由来だと言われています。
 聖ニコラスが貧しい家に金貨を投げ入れましたよね。その金貨が暖炉の側に干してあった靴下に入ったところから、クリスマスのプレゼントを入れるために靴下を準備するようになったという説もあります。
 生徒たちはなるほど、と言った様子で聞き入っていた。


7.サンタクロースはいるんでしょうか。理由も一緒に答えましょう。
■次の発問を導くためのものである。

<いる>8名
・信じているから
・テレビで見たことがあるから
・プレゼントが来るから
・外国にはいるから

<いない>21名
・見たことがないから
・母に言われたから
・一晩でプレゼントを配るのは無理だから
・親にプレゼントを渡されたから
・話の中だけのものだから

 次の発問につなげるために「いる派」を先に発表させ、後から「いない派」を発表させるとよいだろう。


 この後、ニューヨーク・サン新聞社説 中村妙子訳『サンタクロースっているんでしょうか?』(偕成社)の読み聞かせを行った。時間的に全文を読むのはきついので、バージニアの質問と、サン新聞の社説の一部(教師が感動した部分を中心に)を読んだ。


8.なぜクリスマスのサンタクロースが世界に広まったのでしょうか。次から選びましょう。
■発問7と矛盾してくるが、中学生という発達段階を踏まえたうえで、親が子を思う気持ちに焦点を当てた発問である。
<選択肢>
 ア サンタクロースがかわいいから
 イ クリスマスに商品を売りたいから
 ウ プレゼントをもらった子どもの喜ぶ顔が見られるから
 エ その他
 アだと思う人? と聞くと当然誰もいない。イだと思う人? と聞くとこれも誰もいなかった。ウだと思う人? と聞くと全員が挙手をした。エだと思う人? と念のため聞くと誰もいなかった。
 「プレゼントをもらった時の、子どもが喜ぶ姿を見たくておうちの人はクリスマスにプレゼントを贈っているのでしょうね。」と言ってまとめた。

 最後に授業の感想を書かせて終わりにした。
・サンタクロースが実際にいると思っていませんでした。でもサン新聞の質問の答えを見て信じることの大切さ、夢を持つことの楽しさを知りました。私は今日の授業をしてサンタを信じてみようと思いました。
・私はサンタはいると信じています。TVでそういう特集があったからです。でも実は小学生だったときは、全く信じていませんでした。けれど、今日の話を聞いてサンタクロースが好きになりました。これからも子どもたちの願いをかなえてあげられるといいですね。
・サンタクロースがいるから子どもたちの喜ぶ顔とか、思いやりとか優しさがあっていいと思った。