小学6年生・中学3年生向け
修学旅行を控えている生徒に
具体的なマナーについて知り、考える授業
修学旅行では、多くの学校が班別自由行動を行っています。そこでは世の中でのマナー
・常識を守ることが求められます。しかし、知識がなければ守ることもできません。
この授業では、電車の乗り降り、エスカレーターの乗り方のマナーについて知り、それ
を考える内容にしました。
この実践の8割ほどは、佐藤幸司氏の実践記録「ルール・マナー・エチケットを越えて」
(日本標準『とっておきの道徳授業4』)の追試です。(佐藤幸司氏の実践では、ルールや
マナーやエチケットを越えてプラス(善行)を行おうという意欲を持たせるようになってい
ます。読者の皆様も参考にしてください。)
本実践では修学旅行の事前指導を強く意識していたので、最後がハウツーになってしまい
ました。この点で道徳授業と言えるかどうか意見が分かれるところでしょう。
しかし、「誰のためのマナーか?」と考える部分が最後に入ったので満足しています。
●ねらい
マナーを知り、実践することも大切だが、鵜呑みにせず、自分なりに考えることも大切だ
いうことに気づく。
●準備
とっておきの道徳授業4(日本標準)
●授業の実際(中学3年生で実施)
1)〜3)は「とっておきの道徳授業4」(日本標準)の佐藤幸司氏実践「ルール・マナー
・エチケットを越えて」の追試です。
佐藤幸司氏が書かれたような生徒の反応がありました。ですから、1)〜3)は省略します。
4)修学旅行では電車に乗りますが、電車のマナーで、知っていることはありますか。 |
■生徒の現状を把握する質問である。
・大声を出さない
・騒がない
・お年寄りに席を譲る
●降りる人が先で、乗る人は後
・駆け込み乗車はしない
・席を無駄に占領しない
・周りの人に迷惑をかけない
・床に座らない
・食べ物を食べない
・妊婦に席を譲る
「●降りる人が先で、乗る人は後」を発表した生徒には「よく知っていたね」と褒めた。
生徒からこれが出なかったら、教師から出して説明しようと思っていたからだ。
教師の体験も話した。
自分が高校生のときは、電車通学だったけれど、そんなに乗客はいなかったし、人の
乗り降りもなかったので「降りる人が先で、乗る人は後」は意識していませんでした。
しかし、大学生になって東京で電車に乗ってびっくりしました。みんな、当たり前に
「降りる人が先で、乗る人は後」をやっていたのです。
みんなが修学旅行に行って山手線に乗るときには気をつけましょう。これができない
と、「じゃまだな」とか、「よっぽどの田舎から来たんだな」と思われるからね。気を
つけましょう。
あと、出入り口付近に立ってしまった場合は、ドアが開いたら一度外に出て、中の人が
出やすくするのも常識になっています。(と言って簡単な絵を描き説明した)
生徒たちは「なるほど」という感じで話を聞いていた。
5)今度はエスカレーターです。どんなマナーがあるか知っていますか。
|
■これも生徒の現状を把握する質問である。
・走らない
・逆送しない
●右か左どっちかに寄る
6)東京と関西では、エスカレーターでどっち側に寄るかが逆になっています。どっちがどっちでしょうか。 |
■考えるべき材料がないので、深く考えさせずにクイズ形式で簡単に答えさせる。
■また、発問をわざと曖昧にして「6)東京と関西、エスカレーターはどっち側に寄るか」
でもよいだろう。
■「江戸時代、東京(江戸)は武士が多くいて、刀を左に差していたので歩くときは邪魔に
ならないように左に寄る」とか「大阪の人が聞き手でつかまった方が便利でっしゃろ」と
言ったとか噂は多くあるが、紹介程度にとどめておきたい。
答えを言う。
東京は左側に寄って、関西では右に寄るそうです。まるきり逆なんですね。
7)先ほど説明した「東京は左に寄って、関西は右に寄る」ということの問題点を考えましょう。 |
■世間の常識だからといって鵜呑みにする危険性に気づかせる発問である。
多くの生徒が「逆だとややこしい」という答えだったため、「もっと他のことです」と言
って促したが、答えは出なかった。そこで教師が答えを教えた。
エスカレーターに、小さな子どもを連れた大人がいたら手をつなぐよね(「子ども
だけだと危険って書いてあったのを見たことある!」という発言が出る)。その場合、
左側だけじゃなくて、真ん中、右側の方まで場所が必要だよね。
他にも、例えば左半身が不自由な人が乗ったらどうでしょう。左手は使えないから
不便だよね。その場合は右側に寄って右手でつかまった方が安全だよね。
車椅子の人はどうでしょう。もちろん、車椅子用のエレベーターもあるけれど、行
きたい方の逆とか、遠く離れてるって場合もある。そういう時はエスカレーターを使
うかもしれない。そういうときはどっちに寄るとかは関係ないよね。
このようなこともあって、駅では「片側にお寄りください」とは言ってないんだって。
■急いでいる(歩く)人のために片側空けておく、というのが理由になっているが、
エレベーターは「歩く」用には作ってはいないらしい。ということも紹介するとよいだろう。
つまり、危険性が伴うということだ。
●電車のマナーで降りる人が先だと分かった。
●マナーなどは、お年寄りやしょうがい者の人々を考えて決めないとだめだなと思った。
●マナー、ルール、エチケットは似ているようでまったく違う意味だった。電車のマナーは
役に立つと思う。
●エチケット、マナー、ルールの違いが分かった。エスカレーターのマナーでは、
7)の問題点のようなものもあるんだなと思った。
●きまりがいろいろあってたいへん。
●知っているマナーもあれば知らないマナーもあった。修学旅行に行くときには気をつけたいと
思いました。
マナーというのは、当たり前ばかりだけど、とても大切なものなんだなと思いました。
●常識であるマナーは、言われずとも守らなければならないと思った。
●修学旅行に行く時に、こういう間違いをしたらダサイと思った。マナーやルールはあって
当たり前だと思った。
●東京や関西のエスカレーターのマナーが違うことが分かりました。修学旅行などでは特に
エチケット、マナー、ルールをよく守りたいと思います。
●エスカレーターはマナーがあっても体の不自由な人や小さな子どもが乗るのには少し危険
なんだと思いました。
●知らないことがたくさんあって、その知らないことを知れてよかったです。体の不自由な人
がいたら助けて
あげたり、周りの人に迷惑をかけないようにしたいと思いました。
◆授業を終えて(追実践するにあたって)
とっておきの道徳授業4(日本標準)を基にして、後は各クラスの状況や学年に応じて
変えていくとよいだろう。