- 1 - 井の中の蛙 大海を知らず(いのなかのかわず たいかいをしらず)

  中国には黄河(こうが)という、とても大きな川があります。昔、そこには河伯(かはく)という黄河の主(ぬし)がいました。
 ある秋の日、大雨が降り、黄河の水があふれだしました。河伯は、何もかもが水に飲み込まれていく風景を見て……
- 2 - 井の中の蛙 大海を知らず(いのなかのかわず たいかいをしらず)

「すばらしい力だ。この世で俺の力が一番
だ。」と思いました。

 そして、ますます勢いに乗って下流にくだっていくと、北海(ほっかい)に達しました。そこは、河伯が見たこともない、スケールの大きな海でした。北海には若(じゃく)という海の主がいました。
- 3 - 井の中の蛙 大海を知らず(いのなかのかわず たいかいをしらず)

 河伯は、若に語りかけました。

「私は今まで、自分にまさる者はいないと思ってきたが、こうして、あなたのとてつもない大きさに出会えて、本当に良かった。このままだと、私は何も知らずにいただろう。自分が一番だと偉そうにして、みんなから笑い者にされただろう。」と。言ってしまいました。
- 4 - 井の中の蛙 大海を知らず(いのなかのかわず たいかいをしらず)

 すると、若が答えました。

「井戸の中の蛙(かわず=かえる)に、海のことを話してもむだだ。蛙は狭い井戸の中にとらわれているからね。夏の虫に氷のことを話してもむだだ。夏の虫は冬を知らないから。つまらない男に道理を話してもむだだ。知っている知識にしばられているからね。」と。
- 5 - 井の中の蛙 大海を知らず(いのなかのかわず たいかいをしらず)

 以上の話から、見聞(けんぶん)の狭い、世間知らずという意味の「井の中の蛙 大海を知らず」が生まれました。




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