俳句


(三十四)


仲見世の雑踏に買ふ夏帽子

もう何年も鍔広の黒の帽子を被っているが、前とサイド
だけの帽子が欲しかった。仲見世でパナマのような感じ
の携帯もできる良いのが見つかった。ママチャリで買物
するのに最適だ。

道なりに曲がるさつきに触れゆく子




蛍烏賊深海の水したたらす

蛍烏賊は日本近海の深海にいるそうだ。
普通はボイルしたのを買っているが、生のものはとても
瑞々しくて透明感がある。

コークスの匂ふ駅舎を守宮這ふ

石炭で汽車が走っていた頃、駅舎の風呂はコークスで沸
かしていたから、いつも独特の匂いがしていた。

人住まぬ家の崩るる柿の花

近所に人の住んでいない家がある。
庭は荒れ、植木は伸び放題、最近は木造の家自体が倒壊
寸前になっている。所有権があるので町も手が付けられ
ないのだろうが、とても危険だ。

金魚より賑はっている鉢の中

夜店で掬ってきた金魚がちょろちょろしている金魚鉢だ
けど、まるで竜宮城のように鉢の中は華やかだ。


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