句、折にふれて
(三)

茂木枇杷の黄に染まりたる村に来て

台湾から、父の郷里の、長崎県のある村に引揚げましたが、
どのお宅にも大きな枇杷の木がありました。

役場の傍を、小柄なお婆さんが二人話しながら歩いていました。
“**しゃんとこのォ **しゃんがァ 帰って来たげな”
私の祖父と父の名前でした。

私は胸が一杯になりました。ああ、内地に帰って来たんだ!
   これが郷里というものなのねえ




枇杷ゼリーお国訛りの売り子かな

もう何年も前に、九州旅行をした時のことです。まだ、夫も
元気に歩いていました・・・。
お国訛りはいいものですねえ。柔らかい印象で思わず買って
しまいました。


このままでいいと俯く秋海棠

控えめな、優しい秋海棠が、私は大好きです。


睡蓮や母の胸元合はせやる

九十四歳くらいまでは元気な母でしたが、ぼちぼち弱りだし
てからは、弟の家内が、それはそれは良く面倒を見てくれ
ました。私などは、たまに顔を出してお喋りをするだけでした
が・・・。
九十五歳の十二月、母は旅立ちました。
そして、弟も、去年十二月も押し詰まって、突然、母の元へ
旅立ってしまいました。(まだ帰って来ません・・・)


百日草をさな児心経すこし読む

門前の小僧ですわねえ。


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