ふり返れば


(その五)




♪ 灯りをつけましょ ぼんぼりに〜 お花をあげましょ 桃の花♪
  ♪五人囃子の笛太鼓〜  今日は楽しい 雛まつり〜〜♪♪

息子達が、そう、三歳と四歳でした。病んで寝たきりになっていた
祖父つまり私の父の枕元で、唄ったのです。

年子ですから、子供の服はいつも同じデザイン、同じ柄で二つ
作って着せてました。

“男だけど我慢してね”  私は父に声をかけました。
“ほら、おじいちゃんにうたってあげなさい”

    ♪ あかりを つけましょ ぼんぼりに〜〜♪

細い腕の子が二人、お手手つないで一生懸命唄いました。
父は顔をくしゃくしゃにして泣いているようでした。

息子達がまだ二十代の頃でしたか、ある日、親子四人でカラオケ
に行きました。滅多に顔の揃わない家族だのに、どうしたことか
息子二人がハモッテ唄ったのです。

  ♪コモエスタセニョール  コモエスタセニョリター 
     酔い痴れてみたいのよ〜 赤坂の夜〜〜♪

驚いて聴いていた私は、どうしても目の前の二人が、三歳と四歳
の子供にしか見えないのです。細い腕をして、お手手つないで唄
っていたあの姿・・・。


      (♪ あかりを つけましょ ぼんぼりに〜〜 ♪♪)

私もまだ若かった! ピンクのロンパースを二つ作って履かせまし
たねえ。小さなコートを二つ作って象さんのアップリケをしました
っけ。

長男は、いつも本を読んでる子でしたけど、次男はやんちゃで、
近所の小さいお子さんを引き連れてあちこち探険してまわるような
子供でした。




    ♪これか〜ら恋が〜 始るような〜〜 
         そんな気がして ならないの〜
       それが赤坂 赤坂〜 デルコラッソ〜〜♪♪♪


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